Pythonのvars関数とは
Python
のvars
関数は、指定したオブジェクトの属性を辞書形式で取得するための組み込み関数です。クラスやインスタンス、モジュールなどの内部状態を確認したいときに便利で、主にデバッグや動的なオブジェクト操作に利用されます。また、引数を省略して呼び出すと、現在のローカルシンボルテーブルを取得することもできます。
vars
関数は、オブジェクトの状態を可視化し、動的に属性を追加・変更する際にも役立つ強力なツールです。
vars関数の基本構文
vars([object])
object
(省略可能)
属性を取得したいオブジェクトを指定します。オブジェクトにはクラス、インスタンス、モジュールなどが渡せます。引数を省略すると、呼び出し元のローカル変数の辞書が返されます。
基本的な使い方
クラスやインスタンスの属性を取得する
vars
関数を使うことで、クラスやインスタンスの属性を辞書形式で取得できます。これにより、オブジェクトの内部状態を簡単に確認できます。
class Person:
def __init__(self, name, age):
self.name = name
self.age = age
# インスタンスの作成
person = Person("Alice", 30)
# varsで属性を取得
attributes = vars(person)
print(attributes)
# 結果: {'name': 'Alice', 'age': 30}
このように、vars
を使うとインスタンスの属性が辞書として取得でき、キーが属性名、値がその属性に対応する値となります。
モジュールの属性を取得する
vars
関数は、モジュールの属性を確認する際にも使えます。モジュールに定義された関数や変数を動的に調べることができます。
import math
# mathモジュールの属性を取得
math_attributes = vars(math)
print(math_attributes) # mathモジュールのすべての関数や定数が表示される
この例では、math
モジュールのすべての属性が辞書として取得され、sin
やcos
のような関数やpi
といった定数が含まれます。
ローカルシンボルテーブルの取得
vars
関数に引数を渡さずに呼び出すと、現在のローカルシンボルテーブル(ローカル変数の集合)が辞書として返されます。これは、関数内やスクリプト内の変数を動的に調べたい場合に便利です。
a = 10
b = 20
# ローカル変数を取得
local_vars = vars()
print(local_vars)
# 結果: {'a': 10, 'b': 20}
この例では、ローカル変数a
とb
が辞書形式で取得されています。
varsとdirの違い
vars
関数は、オブジェクトの属性名とその値を辞書形式で返しますが、dir
関数はオブジェクトのすべての属性名をリスト形式で返します。属性名だけが欲しい場合はdir
が便利ですが、属性の値も含めて確認したい場合はvars
を使用します。
dir関数の例
class Person:
def __init__(self, name, age):
self.name = name
self.age = age
person = Person("Alice", 30)
# dirで属性名のリストを取得
attributes = dir(person)
print(attributes)
# 結果: ['__class__', '__delattr__', '__dict__', ... ,'age', 'name']
dir
は、オブジェクトが持つすべての属性名(メソッドや特殊メソッドも含む)をリストとして返しますが、vars
はユーザーが定義した属性の値も取得できる点で異なります。
動的に属性を操作する
vars
関数を使うと、オブジェクトの属性を辞書形式で取得できるため、辞書操作のように属性を動的に変更したり追加することも可能です。
class Person:
def __init__(self, name, age):
self.name = name
self.age = age
person = Person("Bob", 25)
# varsで動的に属性を追加
vars(person)['height'] = 175
print(person.height) # 結果: 175
このように、vars
関数を使ってオブジェクトの属性に動的にアクセスすることで、後から属性を追加することが可能です。
デバッグでの活用
vars
関数は、デバッグの際に非常に役立ちます。クラスやインスタンスの状態を簡単に可視化できるため、予期しない動作が発生した際に、オブジェクトの内部状態を調査するのに有効です。
class Calculator:
def __init__(self):
self.result = 0
def add(self, value):
self.result += value
calc = Calculator()
calc.add(10)
# デバッグ: オブジェクトの状態を表示
print(vars(calc)) # 結果: {'result': 10}
この例では、Calculator
オブジェクトの現在の状態(属性result
の値)が簡単に確認でき、デバッグ時に役立ちます。
クラスレベルの属性を確認する
クラス自体に定義された属性やメソッドを確認する場合、クラス名を引数に渡してvars
関数を使うことができます。
class Animal:
species = "Mammal"
def __init__(self, name):
self.name = name
# クラスレベルの属性を確認
print(vars(Animal))
# 結果: {'__module__': '__main__', 'species': 'Mammal', '__init__': <function ...>}
このように、クラスそのものに定義された属性やメソッドをvars
で取得できます。クラス変数やメソッドがどう定義されているかを確認するのに役立ちます。
vars関数の応用例
オブジェクトの状態をJSON形式で出力
vars
で取得した辞書をJSON形式で出力すれば、オブジェクトの状態をシリアライズして保存したり、他のプログラムとデータをやり取りする際に利用できます。
import json
class Person:
def __init__(self, name, age):
self.name = name
self.age = age
person =
Person("Charlie", 28)
# varsで取得した辞書をJSON形式で出力
person_json = json.dumps(vars(person))
print(person_json)
# 結果: {"name": "Charlie", "age": 28}
このように、vars
関数で取得したオブジェクトの属性を辞書形式に変換し、それをjson
モジュールを使ってJSON形式に変換できます。
クラスの動的インスペクション
vars
を使うことで、クラスやモジュールの状態を動的にインスペクション(調査)し、動作を動的に変更したり、コードのメタプログラミングに活用することができます。
import math
# モジュールの動的インスペクション
for name, value in vars(math).items():
if callable(value):
print(f"{name}: 関数")
else:
print(f"{name}: 値")
この例では、math
モジュール内の関数と定数を動的に判別し、それらをリスト化しています。これは、ライブラリの中身を確認したり、動的に関数や定数を扱う際に役立ちます。
結論
Python
のvars
関数は、オブジェクトの属性を辞書形式で取得するための強力なツールです。クラスやインスタンス、モジュールの内部状態を確認したり、デバッグに活用できるだけでなく、動的にオブジェクトの属性を操作することも可能です。vars
を使えば、オブジェクトの状態をより詳細に把握でき、柔軟なオブジェクト操作が実現できます。特に、デバッグやメタプログラミングの場面で役立つため、開発の効率化に大いに貢献します。