Drizzle ORMとは
Drizzle
ORMは、TypeScriptと高度に統合されたシンプルで型安全なオブジェクトリレーショナルマッパー(ORM)です。Drizzle
は、SQLとTypeScriptの親和性を生かし、TypeScriptに最適化された「SQLライク」なORMとして構築されています。他のデータフレームワークと異なり、Drizzle
はプロジェクトに柔軟に組み込むことができ、開発者が既存のSQL知識を活用して効率的なデータベース操作を行える点が大きな特徴です。
Drizzle ORMの特徴
SQLライクな操作性
Drizzle
はSQL構文をベースにしているため、SQLの知識があれば新たな学習なしで利用できます。他のORMではAPIを学び直す必要があることが多いですが、Drizzle
はSQL構文をそのまま利用できる設計のため、学習コストがほとんど発生しません。さらに、SQLクエリに似た構文とTypeScriptの型チェックにより、コードの安全性も高まります。
const result = await db
.select()
.from(countries)
.leftJoin(cities, eq(cities.countryId, countries.id))
.where(eq(countries.id, 10));
上記のように、SQLに馴染みのある開発者であれば直感的に理解できる構文でデータを操作できます。
ヘッドレスORM
Drizzle
ORMは「ヘッドレス」なアプローチを取り、最小限の依存関係で動作します。これにより、開発者は必要な機能だけを選んでプロジェクトに組み込めるため、プロジェクトが複雑になることが避けられます。Drizzle
は、データフレームワークのようにプロジェクト全体に組み込む必要がなく、TypeScriptでスキーマを定義して柔軟に活用することが可能です。
サーバーレス対応のパフォーマンス
Drizzle
ORMはサーバーレス環境での使用に最適化されており、軽量で高性能です。サーバーレスアーキテクチャにおいて、リクエストごとのレイテンシやクエリパフォーマンスは重要ですが、Drizzle
は最小限のリソースでこれらの要求を満たすように設計されています。これにより、クラウド環境でもパフォーマンスを維持したデータベース操作が可能です。
TypeScriptによる型安全性
Drizzle
ORMは、TypeScriptの型安全性を活用しており、エラーをコンパイル時に検出することができます。TypeScriptでスキーマを管理することで、データベース操作における型の整合性が保たれるため、リファクタリングが発生しても安全に進めることが可能です。
Drizzle ORMの操作方法
スキーマの定義
Drizzle
では、TypeScriptを使用してデータベースのスキーマを定義します。以下は、countries
とcities
という2つのテーブルを定義する例です。
import { integer, pgTable, serial, varchar } from 'drizzle-orm/pg-core';
export const countries = pgTable('countries', {
id: serial('id').primaryKey(),
name: varchar('name', { length: 256 }),
});
export const cities = pgTable('cities', {
id: serial('id').primaryKey(),
name: varchar('name', { length: 256 }),
countryId: integer('country_id').references(() => countries.id),
});
クエリの実行
Drizzle
ではSQLライクな構文を使用し、TypeScriptによる型安全なクエリを記述できます。select
やinsert
などのメソッドを用いて、柔軟にCRUD操作を行えます。
const newCountry = await db.insert(countries).values({
name: 'Japan'
});
上記の例では、countries
テーブルに「Japan」という名前の新しい国を挿入しています。
マイグレーションの管理
Drizzle
ORMはマイグレーションツールも備えており、スキーマの変更管理が簡単に行えます。スキーマ変更に応じたSQLファイルを生成してデータベースに適用することが可能です。
CREATE TABLE IF NOT EXISTS "countries" (
"id" serial PRIMARY KEY NOT NULL,
"name" varchar(256)
);
なぜDrizzle
ORMを選ぶべきか
Drizzle
ORMは、次のような理由から開発者にとって有力な選択肢です。
- 学習コストの低さ:SQLに基づいた操作が可能なため、新たなAPI学習の負担が少ない。
- サーバーレス対応:軽量でサーバーレスに最適化された設計により、コストとパフォーマンスのバランスが取れています。
- 高い柔軟性:ヘッドレスアーキテクチャにより、他のツールやサービスと簡単に統合可能です。
- 型安全性:TypeScriptによる型の安全性により、堅牢で保守性の高いコードが実現できます。
まとめ
Drizzle
ORMは、SQLとTypeScriptの親和性を生かし、シンプルで柔軟なデータベース管理を実現する次世代のORMです。型安全性、サーバーレス対応、ヘッドレス設計など、現代の開発環境に求められる機能を備えつつ、学習コストが低くすぐに活用できる点が魅力です。PostgreSQLやMySQL、SQLiteなど主要なデータベースに対応しているため、さまざまなプロジェクトでの活用が期待できます。
参照:
Why `Drizzle`?